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第7回:東北の温泉

1 森田温泉   
 青森県津軽郡森田町森田字月見野

 岩木山の北側森田町に素晴らしい温泉がある。含炭酸重曹弱食塩泉で41度、成分総計6165mgのものだ。小さな宿であるが、湯が個性的でかつ大量の掛け流しで使われ方も良好である。
 私が今まで入った温泉の中で炭酸泉というと炭酸分が気化した痕跡が残るのみで、放置した炭酸飲料を思わせるものが大半であった。炭酸分の含有は431mgとそれほど多くないが入浴可能な温度で、いまだ充分に含有しているのは珍しいもので、ここ以外には宮崎県や大分県などで見られるのみである。
 入浴するとまず身体全体に清涼感が襲う。まるでサイダーの中に入っているような感覚…しかし暖かいという不思議な感覚である。そして直後に肌の表面に気泡が成長し泡だらけになるという面白いものである。これは41度という比較的低い温度で湧出していることと大量の源泉が常に補充されているということ、そして浴槽の容積が最高のバランスを持っているためだと思われる。
 40度も後半の温度になると炭酸は源泉井戸の湧出口で急速に気化してしまうことが多く浴槽では抜けてしまうからだ。この珍しい湯をぜひ経験してみてほしい。
   


2 湯の越温泉
秋田県南秋田郡五城目町浅見内

 秋田県は乳頭温泉郷や八幡平周辺に温泉が集中し有名であるが、それ以外にも県全体に数多くの温泉が湧出していて温泉に恵まれた県である。
 ここ湯の越温泉は五城目町にある一軒宿である。宿の造りが白木の美しい木造でたいへん瀟洒で良い。また一部旧館の部分があるが、こちらは立派な民家の造りで私はこちらに泊まりたくなった。湯が更に気に入った。45.7度の含硫黄食塩重曹泉で、色は白濁し、重曹を含む甘塩味と強い焦げ硫黄臭で存在感がある。浴室も瀟洒な木造でこの名湯を引きたてている。2槽に分かれた湯は温度によって微妙に色が異なる。硫黄泉全般に言えることだが、高温ほど色が薄い、印象に強く残った良い温泉であった。

   


3 蔵王開拓温泉
  宮城県白石市       

 蔵王の周辺は強酸性の蔵王温泉を筆頭にして遠刈田温泉や鎌先温泉などの名湯が多いが、ここ蔵王開拓温泉も良い。白石を眺める蔵王山の南斜面に位置し、高原の露天風呂には72.8度の含石膏食塩芒硝泉が湯量豊富に掛け流されていた。湯の色は緑褐色に濁り、湯船は褐色に染まっている。
 芒硝の薬味と鉄分の渋味が混じり、金気臭が漂う。4.2mgだが鉄分が良く出ていて湯の存在感を高めている。総計3627mgであるが、味、色、匂いで濃く感じ満足した湯である。施設は簡素なものである。温泉とは金をかけた立派な施設よりも簡素なものが良く、源泉そのままでなにもしないのが最良であることが多い。ここはまさにその通りであった。
   


4 錦温泉
  福島県いわき市

福島県の浜通りには有名ないわき湯本温泉があるが、そのいわき市の周辺には山ふところに小さな鉱泉宿が点在している。その中でもここ錦鉱泉は湯小屋の外観と内部の意匠ともに一種ノスタルジーを感じるような完璧なレトロ感を醸し出している。この種の施設では抜群の輝きを放っている。私は訪れたとき、まず「時間が止まっている」と感じた。湯は単純硫黄泉とのことであるが透明、無味、無臭であった。しかしここの存在は貴重であると思う、末永く変わらずに残っていてもらいたいと願う。  
   
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